【フランツ・リスト】浅田真央選手が演技した《愛の夢》を徹底解説!

ピアノの曲

こんにちは、現役音大生でピアノ講師です!今回は、フィギュアスケートの浅田真央選手が2011-2012シーズンのフリー演技で使用したことで一躍有名になった、フランツ・リスト作曲の《愛の夢》について、詳しく解説していきます。ピアノを習っている方なら一度は耳にしたことがあるこの曲ですが、実はその背景にはちょっとした誤解があるんです。

「愛の夢」として知られているこの曲、実は正式には「愛の夢第3番」ではなく、リストが作曲した「3つのノクターンS.541」という曲集の第3曲目なんです。「ノクターン(夜想曲)」といえば、穏やかで夢見るようなメロディが特徴ですが、この曲もその例に漏れず、リストのロマンティックな感性が溢れています。曲名として「愛の夢第3番」と表記されることが多いですが、これは実際には第3曲目で、正式なタイトルは「おお、愛しうる限り愛せ」(O lieb, so lang du lieben kannst!)です。

この記事では、この美しい作品の演奏方法や、どのようにして効果的に練習すればよいかを、現役音大生でピアノ講師としての視点から解説していきます。リストの名曲に挑戦してみたい方、既に練習している方、そしてこの曲に興味がある全ての方にとって役立つ情報をお届けしますので、最後までお付き合いください!

リスト作曲「愛の夢」について

皆さんもご存知かもしれませんが、浅田真央選手が2011-2012シーズンのフリー演技で披露した「愛の夢第3番」は、多くの人々に感動を与えた名曲です。しかし、この曲について少し誤解があるかもしれません。「愛の夢第3番」として知られるこの曲は、実は正式なタイトルではないのです。

「愛の夢」というタイトルは、リストが作曲した「3つのノクターン S.541」という曲集全体を指しているのです。つまり、これは1曲の名前ではなく、3つの夜想曲(ノクターン)からなるセットの総称です。この点は、例えばシューマンの「子供の情景」やショパンの「12のエチュード Op.25」が複数の曲をまとめた曲集であることと同様です。

その中でも、特に有名なのが第3曲目で、これは「おお、愛しうる限り愛せ」(O lieb, so lang du lieben kannst!)という詩に基づいています。つまり、私たちが一般に「愛の夢」と呼んでいる曲は、実際には「3つのノクターン S.541」の中の第3番にあたり、その正式なタイトルは「おお、愛しうる限り愛せ」なのです。

正確に表現するならば、この曲は「愛の夢 3つのノクターン S.541より第3番 おお、愛しうる限り愛せ」という長いタイトルになりますが、ここでは便宜上「愛の夢」として話を進めていきますね。この曲の背後にある物語や詩の背景を知ると、演奏する際の解釈もより深まることでしょう。

本当は天国の夫が「もっと愛せばよかったのに」と皮肉る歌

本当は天国の夫が「もっと愛せばよかったのに」と皮肉る歌

「愛の夢」として広く知られているこの名曲ですが、実は元々は歌曲として作曲されたものでした。しかし、なかなか難しい内容の詩であったため、ピアノ版の方が有名になったのです。では、元の歌曲はどのような内容だったのでしょうか?

物語は、年の差婚をした2人の男女から始まります。この夫婦の関係は、時が経つにつれて冷めていきました。年齢の差があるため、当然ながら年上の男性(ここでは夫)が先に亡くなってしまいます。しかし、彼が亡くなると、妻は突然涙を流し始め、「ああ、なぜ私はあの人をもっと愛さなかったのか」と後悔の念に駆られるのです。

そこで、亡くなった夫は天国から皮肉たっぷりに「もっと愛せば良かったのに」と歌いかけます。この詩には、かなり強い感情が込められており、西洋の詩にはよくあることですが、かなり過激な表現が使われています。例えば、「私の周りを通った空気が貴方の元に届けばいいのに」というような、強烈な感情を表す詩も存在します。

確かに、これほど強烈で複雑な感情を持つ詩であれば、ピアノ版の方がより広く受け入れられるのもうなずけますね。ピアノ曲として演奏することで、この複雑な感情を、言葉ではなく音楽で表現することができるのです。

リストの中では比較的簡単な作品

リストといえば、まず「パガニーニによる大練習曲集S.140」や「超絶技巧練習曲集S.139」などの超絶技巧を要する作品が思い浮かびますよね。それだけに、「リスト」と聞くと、難易度の高さに尻込みしてしまう方も多いかもしれません。でも、この「愛の夢」は、リストの作品の中では比較的取り組みやすい一曲なんです。

もちろん、厄介なパッセージは含まれています。特に、中間部では技術が試される部分もありますが、そこさえ乗り越えればあとは意外とシンプル。もしショパンの「幻想即興曲」が弾けるなら、この曲も十分に挑戦できるレベルです。リスト作品の中でも簡単なものとしては、「コンソレーション第3番」や「2つの演奏会用練習曲集より第2番 小人の踊り」などが挙げられますが、「愛の夢」もそれに匹敵する難易度です。

2人でデュオできるように書かれた構成

この「愛の夢」には、ちょっとユニークな演奏の楽しみ方があります。前半部分に限った話ですが、なんと2人でデュオができるように構成されているんです。いや、もしかしたら頑張ればバックハグしながら弾けるかも?(おっと、さすがにそれは冗談です。)

前半部分では、メロディーラインを親指で弾くように設計されていますが、ここをもう一人が片手でサポートすることで、デュオとして演奏できるんです。これが、この曲のちょっとした面白さ。そして、中間部に入ると、内声と外声に分かれることで、さらに2人で分担して演奏することができます。まるでバックハグをするかのように、息を合わせて演奏することで、独特のハーモニーを生み出せるのです。こんな楽しみ方ができるのも、この作品の魅力の一つですね。

音大生が解説する「愛の夢」の弾き方

2箇所の鬼パッセージの攻略法

リストの「愛の夢」は、美しいメロディと感情豊かな表現が魅力の作品ですが、その中には手強いパッセージが隠れています。特に6ページの楽譜の中で、2箇所にわたる小音符の鬼パッセージが存在します。これらはちょうど中間部のつなぎ目に位置しており、演奏者にとって最大の山場となる部分です。特に後半の鬼パッセージは、さらに難易度が高いため、ここはしっかりと練習して臨む必要があります。

最初の鬼パッセージの攻略法

まず、上行型のパッセージについて。ここでは、右手の下の音と左手が同じ音を弾くことになっていますが、正直言って、これを両手で弾く意味はあまりありません。右手だけで取ることもできますし、左手で取ることも可能です。ただし、左手を使うと音が複雑になり、特に本番でミスを犯すリスクが高くなります。そこで、ここは右手で一貫して取ることをおすすめします

次に下行型のパッセージです。この部分では、右手が3度や4度の音程を形成し、左手と合わせて6度の和音を作り出します。右手はすべてレガートで弾くことが可能です。和音のどちらかの音を速く取り、もう一方に支えを移すことで(ここでは下の音に支えを移します)、スムーズな演奏が可能になります。

左手については、親指が返せず、レガートが切れてしまうことがあります。その場合でも、「ブチッ」と切るのではなく、できるだけレガートに移動することを意識しましょう。これにより、支えがつながった感覚が生まれ、演奏中にミスを減らすことができます。こうした細かなテクニックを駆使することで、鬼パッセージも攻略可能です。

後の鬼パッセージの攻略

後半に登場する鬼パッセージは、まさにリストの名にふさわしい難易度を誇ります。特に難しいのは、半音階の3度の下行型です。ここでは、各音が微妙にずれているため、指の動きがかなりシビアになります。このパッセージを克服するためには、まずはゆっくりとしたテンポで正確な指使いを確認しながら練習を進めることが大切です。速さに焦ることなく、まずは正確に音を拾うことを意識しましょう。

また、両手での分配をうまく利用することで、このパッセージは驚くほど弾きやすくなります。例えば、右手だけで取る部分をあえて左手に任せることで、右手の負担を軽減し、スムーズな演奏を実現します。この分配方法は、曲全体の流れを考えながら、自分のやりやすい形で調整していくことが重要です。

旋律はくっきり、伴奏は背景に

「愛の夢」の魅力のひとつは、その美しい旋律です。この旋律をしっかりと聴かせるためには、旋律を大きめに、伴奏を小さめに弾くことが基本です。旋律は、歌うように弾くことでその美しさが最大限に引き出されます。特に、フレーズごとの息づかいを意識し、旋律が途切れることなく流れるように演奏しましょう。

伴奏は背景として控えめに演奏し、旋律を引き立てる役割を果たします。このバランスを取ることができれば、「愛の夢」の持つ豊かな情感をより一層際立たせることができます。また、旋律をしっかりと聴かせるためには、自分自身がよく歌いながら練習することも効果的です。旋律を歌うことで、その自然なフレージングが身につき、演奏にもそれが反映されます。

やぶにらみ? ここはとっても難しい

中間部に差し掛かると、この曲はさらに難易度が上がります。特に難しいのは、両手が鍵盤の外側や中央に素早く移動する部分です。この部分は、目で追い切れない速さで手を動かさなければならないため、非常に難易度が高いです。目は外側に開かないので、どうしても視界から外れる鍵盤の位置を脳に叩き込む必要があります。

このためには、鍵盤の配置を体に覚えさせる反復練習が欠かせません。鍵盤を見ずに手を動かせるようにするためには、何度も繰り返し同じ動作を行い、手の動きを身体に染み込ませることが大切です。特に、中間部ではミスが許されないため、確実に手の動きを体に覚え込ませるまで練習を重ねましょう。

暗譜が怖い再現部

「愛の夢」の再現部は、冒頭と似ていますが、若干の違いがあるため、暗譜が飛びがちな箇所です。特に、冒頭部分との微妙な違いを意識しながら演奏することが重要です。この違いを見落とすと、せっかくの暗譜が崩れてしまう可能性が高くなります。

再現部を正確に演奏するためには、ただ覚えるのではなく、冒頭との違いをしっかりと理解した上で暗譜を行うことが必要です。各フレーズがどのように変わっているのか、細かくチェックしながら練習しましょう。また、再現部を意識した暗譜のために、冒頭から通して弾くのではなく、再現部のみを取り出して集中的に練習するのも効果的です。この部分がしっかりと弾けるようになれば、全体の演奏がより安定し、より一層自信を持って「愛の夢」を演奏できるようになるでしょう。

まとめ

今回は、リスト作曲の《愛の夢》について解説しましたが、いかがだったでしょうか?現役音大生でピアノ講師が解説するように、この曲はリストの中でも比較的取り組みやすい作品でありながら、その美しさと感情表現の豊かさは格別です。特に、浅田真央選手が演技で使用したことで広く知られるようになり、多くの人に愛される名曲となっています。

《愛の夢》を演奏する際には、2箇所の鬼パッセージをしっかりと克服し、旋律を際立たせる演奏を心がけることが大切です。また、中間部の難所では、鍵盤の配置を体に覚え込ませることで、スムーズな演奏が可能になります。再現部では、冒頭との微妙な違いに注意しながら、暗譜を確実にしていくことがポイントです。

この曲を練習することで、リストの持つロマンティックな世界に触れながら、自分自身の演奏技術を一段と高めることができるでしょう。「愛の夢」を通じて、自分の音楽をさらに深めてください。発表会やコンサートで、この美しい曲を披露する瞬間を楽しみに、練習を重ねていきましょう!

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